平成21年度 吹田市音楽療法推進事業シンポジウム 開催レポート
2009年3月6日(土)午後1時30分 ~ 3時30分
吹田市文化会館 メイシアター 小ホールにて行われた、
平成21年度 吹田市音楽療法推進事業シンポジウムのレポートをお届けします。

第1部は、吹田市より受託している音楽療法推進事業の報告会
増田理事長から事業概要・本年度の活動内容などについて報告がありました。

1)市民研修会 夏頃に3回コースで開催 50名程度の参加
市民研修会について報告
2)音楽療法事業
★実施施設:
吹田市立障害児通所施設 2箇所
認知症対応型高齢者グループホーム 7箇所(3年が経過し、今回で終了)

★各施設での取り組み
プログラムの簡単な紹介とセッションの様子などを報告。
※守秘義務がありますのでここでの紹介は控えさせて頂きます。ご了承ください。

グループホームなどでは、歌中心のプログラムで構成されており、
呼吸機能の改善を図ると共に、他の参加者との関わりが生まれ、
共感、会話を楽しむ、感情を呼び起こすなどの効果が現れています。

★アンケートの公開グループホームでの3年間の取り組みが終了する為、各施設にアンケートを依頼、
その回答なども紹介されました。(7箇所のうち6箇所の施設より回答)
・音楽療法の効果はあったか?→5つの施設が「効果があった、やや効果があった」に回答。
・効果として認められること→「ストレスの軽減」「入所者同士の交流が見られた」への回答件数が多い
・具体的な変化→「特定の人としか交流しない方も音楽療法の時間は皆と会話ができる」
「回数を重ねると笑顔が見られ、積極的に活動に参加される」
「言葉の出にくくなっていた方がスムーズに歌っていた」
「歌を歌ったり聴いたりすると音楽療法の時間を思い出され、心待ちにされていた」etc...
・今後続けて音楽療法を取り入れるか?→半数(3箇所)が継続、半数(3箇所)が続けたいが費用負担(1回5,000円程度)が出来ないと回答。
・事業に対する意見→「有意義な時間が持ててよかった」「費用負担が大変なので援助を続けて欲しかった」

★施設のご担当者と理事長との対談
施設ご担当者との対談風景
・外部から人がやってくること→スタッフだけでレクリエーションなどを行うとマンネリ化していく傾向にあったが、外部から人がくるだけで、入所者の方の表情が変わったり、「お茶を用意しておいてね」というような会話が出来るようになった。大事な事があるんだという意識につながったというご意見の発言がありました。
・他のレクリエーションとの違いは→ドッグセラピー他様々な物を取り入れているが、音楽療法は人気が高く、予告をすると皆さんが集まってくる。
・伝えたい事は→(継続が難しいという立場を持った施設の担当者)利用者の家族が上層部の方がいる時に感想などを言ってくださっており一定のアピールは出来ている。
・予算捻出について→(継続すると答えられた施設の担当者)認知症の方が多く、覚えられない事が多くなるのでは?と思ったが、やはり継続することが大事だと考えた。

と生のお言葉をお聞かせ頂く事が出来ました。

★3年間を振り返り、各音楽療法士からの感想など
「自身がセッションをやりながら癒されていた」
「心地よい、楽しい、和やかな雰囲気を作るよう努めた」
「各フロアの交流が無かったのが、皆さんに参加頂いて交流が生まれた」etc...

★理事長まとめ
理事長のまとめ
色々なやり方を試すことには、それぞれ一長一短があるもの。
歌うことだけでなく、そこから生まれる話題による会話が重要だった。
会話できない方、無表情な方でも実は良く聴いておられ、別の機会に関わると笑顔などの反応があった。
療法士と助手のコンビの会話が漫才トークのようになり楽しい雰囲気になった。

★質疑応答
Q1:どのような感じで歌うのか1曲実演してみて欲しい→講演の後半で若干実演があります。
選曲としては80~90歳代の方が生きてきた背景に合う歌を新旧問わず選んでいます。
ここで音楽療法を体験した事があるかどうかを挙手頂き、未体験の約半数の方に市民研修の受講をアピールしました。(平成22年度の事業継続~受託は現在の所未定)
挙手されているのが音楽療法未体験の方

Q2:施設で働いているが、音楽療法を取り入れたい事を上の人に伝えたいので文書資料などはないか→終了後にお声掛けください。
現場の方だけが声を上げても中々上層部に良さが伝わらないものですが、お試しセッションなどを開催する事なども出来るので、興味があればお問合せを。

****5分の休憩****

第2部は「歌うことが口腔ケアになる」
(誤嚥性肺炎の予防として行われる音楽療法について)
神奈川リハビリテーション病院歯科口腔外科 甲谷 至(こうやいたる)氏のご講演
甲谷先生

理事長による紹介の後、簡単な自己紹介をされてすぐに本題に入りました。
まずは音楽療法の定義について。端的に言えば「目的を持った音楽活動」のこと。
また音楽活動・音楽教育と音楽療法の違いについて説明されました。
音楽療法の歴史と、日本における音楽療法の現状なども簡単にご紹介され、
いよいよ本題に入りました。
「歌うことは医学的にどう役立つの?」というテーマから、
歌の活動が比較的多い高齢者対象に、会場の皆さんと共に考えて行きました。

2006年4月から施行された「改正介護保険法」は介護予防重視型の施策となったこと、この法律と、実際の高齢者との関係として、介護支援を受けている人、要支援の人、健康なため支援を受けていない人、支援を受けていないが予備軍にあたる人の分布などを、図で紹介されました。
そして、新しくなった「予防給付」制度の紹介や、支援を受けていない人向けに実施されている、講演会や啓発といった「地域支援事業」の説明もあり、どういったシステムに変わったのかが理解できました。
改正介護保険法についての説明風景
この制度の中でサービスとして提供される「口腔ケア」の内容や、
音楽療法士がやっていいこと、やってはいけない事などをわかり易くご説明頂きました。
医療行為は出来ないものの、歌うこと、ストレッチなどの体操、対象者との会話など、音楽療法は、口腔領域の機能低下防止効果がある事を念頭に活動、施設の職員などにも説明して欲しい、と話されました。

話題の転換前に休憩タイムと称して、昨年の早春に音楽療法の学会で京都にいらした時に撮影された美しいさくらの写真のスライドショーも披露されました。
次の話題へ行く前に一呼吸置くことで、聞いた話の整理が付く効果があるように思いました。
閑話休題披露された素晴しいお写真の一つ
続いて、口・ノドを横からみた図を使い、食べ物や空気がどのように流れていくかの説明がありました。
そして、高齢者がなぜ「誤嚥性肺炎」でなくなってしまうかの原因にも触れられました。昨年亡くなった山城 新伍、ギター製作家のレス・ポールなどの死因もこの「誤嚥性肺炎」だったそうです。

この後は音楽療法+口腔ケアを取り入れた実際例などを色々ご紹介くださいました。
発声練習を兼ねながら、できる口唇・頬・舌のストレッチなど。
また脳卒中患者のリハビリと、女性の美容領域の「美顔ストレッチ」は似ているので、応用可能であるとの嬉しい情報も頂きました。
お喋りする時、食べる・飲み込む時にも口の中の様々な器官の働きが必要なことから、「パ」「タ」「カ」「ラ」行の発声練習を歌いながらする事で、実は嚥下機能の向上にもつながるのだとか。

また、歯科医療と音楽療法の関係についても現在の事例や連携への展望、
薬の副作用(精神科領域の薬、降圧剤など)による口の渇きが音楽療法によって改善する例などについても話され、いよいよ結びに入りますが、甲谷先生は上着を脱いで椅子を立ち、「寅さん」の口上をご披露!!
寅さんの口上を披露する甲谷先生
このセリフも前述の「パ・タ・カ・ラ」行の発音が多く、口腔ケアに効果的という事で、
口上に続いて始まる歌に乗せて、今までご紹介下さったストレッチなどを組み合わせた、「寅さん体操」を参加者の皆さんと一緒に体験しました。
座ったまま出来るもので、腕を上げたり、つま先を動かしたりという動きなども含まれており、転倒の防止などにも効果があるような構成になっていました。

最後は、実証された医学的効果を例に挙げ、誤嚥を防ぐ事にも繋がるという説明により、「歌うことは医学的根拠のある活動」であると力強く話され、
音楽療法士の心構えとして、歌の活動はちゃんとした裏づけがあること、
介護保険サービスとして国の後押しがあるチャンスを活かして進んで行こう、と結ばれました。
スライドに登場する先生の似顔絵が似ています。
講演時間もピッタリ1時間で終了され、プレゼンテーション技術も素晴しく大変参考になりました。
話者の人柄やユニークな展開などが、やはり大事だということも解りました。
内容は音楽療法士の方向けでしたが、自宅などで介護する高齢者の方が居られる人にも、歌いながら、または音楽に合わせ簡単・手軽に実践可能なストレッチや体操を教えて頂けて、とっても有意義な時間になったと思います。甲谷先生、ありがとうございました!
理事長と最後のご挨拶
また、足元の悪い中ご参加下さいました皆さまにもお礼申し上げます。
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